若き日の想い出④
オヤジの後ろで聞こえた「休憩!休憩!」の声はどこか聴き覚えのある声だった。
振り返って見ると何とそこには折り畳み椅子に座った「西郷輝彦」さんがいたのである。
近くには、先日亡くなった坂口良子さんのデビュー当時の可愛らしい姿があった。
日活のスターだった葉山良二さんもいた。 このロケは当時「江戸を斬る」と同じ時期に
少しの期間だけ放送された「新幹線公安官」と言うテレビ番組のロケだったのである。
状況がようやく理解出来た頃には恥ずかしさが込み上げて来たが、オヤジの目の前に
は、あの西郷輝彦さんが座っているのである。 私は思わず駈け寄って不手際をお詫び
した。 この時は特別の制止は無かったのですぐ目の前で話をする事が出来たが、私は
その時西郷さんが言った、「貴方のお陰で休憩が出来たよ!」の言葉が忘れられない。
当時の大スターの優しい一言にオヤジはすっかり舞い上がったのを今でも覚えている。
別れ際に私は思わず「越前さん見てますこれからも頑張って下さい」、と言ってしまった。
その時、西郷さんは、「エッ?もう一度?」、と返して来た。 よく考えたら「江戸を斬る」は
大岡越前さんではなく遠山の金さんだ。 オヤジは益々舞い上がってしまったのである。
「済みません、金さんでした」、と言うと西郷さんは「そうそう」と優しく笑った。
長々と書いた大スターとの思い掛けない出会いだが、オヤジには若き日の想い出として
大切なエピソードの1つになっている。
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