韓国旅行回想記⑤
さあ、いよいよJSA(共同警備区域)の見学が始まった。
2列に並び列を崩さない様に注意しながら進んだ。 やはり緊張がひしひしと伝わって来る。
自然に見学者から白い歯が見えなくなった。 最初に施設全体が見渡せる展望台に登る。
ニュースなどでよく見掛ける建家が並んでいる。 北朝鮮側の監視所や、北朝鮮側からここ
を見学する時に利用する施設の「板門閣」が目の前にある。 監視所の窓からは、北朝鮮の
兵士が双眼鏡でこちらの様子を窺っているのが判る。 思わず指をさしそうになり、挙げかけ
た手を引っ込め、頭を掻いてごまかした。 いやいや銃弾が飛んで来ては大変である。
展望台を降りて、次は南北の話し合いが行われる停戦軍事委員会会議場に入った。
会議場は南北に長い建物になっていて、ちょうど建物の真ん中を軍事境界線が通っている。
見学者は、この会議室の中だけ軍事境界線を越えて、北朝鮮側に入っても良い事になって
いる。 境界線の北側の窓からは、時々北朝鮮の警備兵が会議室をのぞき込んで来る。
外を眺めていると、急に窓ガラスを挟んだ距離で兵士と顔が合ってしまい驚いた。
その後、見学バスに乗車して、斧蛮行事件の原因になったポプラの木跡や、朝鮮戦争後に
南北の捕虜を交換する際、一度行き先を北か南に決めたら二度と帰る事が出来ないと言う
事から名前が付いた「帰らざる橋」を見学し、最後に高台から北朝鮮側の町を遠くから眺め
このツアーを終えた。
帰り路、韓国の人が普通に訪れる事が出来る最北端である臨津閣(イムジンカク)で参加者
全員でプルコギの昼食をとった。 これが結構イケる味であった。
ここは鉄道の線路が南北に通っているにもかかわらず、寸断された壁には有刺鉄線が張り
巡らされ、統一を願う文字が書かれた布が悲しく絡み合って揺れていた。
望拝壇と書かれた石碑に供え物をし、涙を流しながら北に向かって泣き叫ぶ老婆もいた。
ある日突然国が分断して、肉親が離ればなれになってしまい、今もなお軍事態勢にある国と
平和ボケした日本との大きな違いを考えずにはいられないJSAの見学ツアーであった。